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ドローン・オブ・ウォー(2014年/アメリカ) バレあり感想 新たな戦争の形に疑問を抱いた男が崩壊していく様が本当に恐ろしい。

 

これこそ本当にアメリカにしか作れない映画だと思う。

 

 

ドローン・オブ・ウォー

(GOOD KILL)

ドローン・オブ・ウォー(字幕版)

ドローン・オブ・ウォー(字幕版)

 予告:https://youtu.be/4fGputLUYc4

 以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

ストーリー

パイロットからUAVの操縦者に転身した男が、その異常性に呑まれ崩壊していく。

 

感想

アメリカの正義とは何ぞや?という問いかけと、その歪みに翻弄され精神をすり減らしていく男の姿を描いた映画。

今作でフォーカスしているのは無人攻撃機(Unmanned Aerial Vehicleによる攻撃の問題点です。特に操縦者達の問題(特に人を殺している事実に対する認識について)誤爆による一般人への被害についてかなり切り込んだ内容になっていてビックリしました。

主人公で元パイロットのUAV操縦者トミーをイーサン・ホークが、トミー達の部隊の上官役をブルース・グリーンウッドが演じていて手堅い役者を手堅いポジションに配役しています。この配役はとてもマッチしていると思います。繊細なニュアンスが求められる内容ですし。

 

 

 

トミーが元ベテランパイロットである事が何度も強調されます。これは戦争の形が変わった事を示しているのと同時に、ベテランと呼ばれるほど長く軍属として生きていて、軍隊というシステムに慣れた人間ですら壊れてしまう異常なシステムを描いた点が個人的には重要なんじゃないかと思います。

 

UAVによる一方的な攻撃は既存の戦争形態と大きくかけ離れたものです。安地から命令を受けた座標や標的めがけ一方的に攻撃を行えます。

爆撃を行っても衝撃や音は伝わる事無く、ただ画面の向こうの建造物や人間が吹き飛ぶだけです。

この静けさは異様です。戦争映画ですが既存のそれらとは明らかに違う異常な静けさがありました。

「画面越しでもゲームとは違い実際に人を殺している事実を忘れるな」とジョンズ中佐が新米兵士達にスピーチするシーンがありました。

しかしこの戦い方に現実感をもって挑んだトミーは結果として、冷房の効いた安全な基地の一室から一方的な殺戮を行う状況に精神を疲弊させていく事になります。

当所はトミー自身もどこか麻痺していたような雰囲気がありましたが、ストーリーが進むにつれどんどん異常性が浮き彫りになっていきます。

更に中盤以降はCIAからの極秘任務として、無関係な一般市民を巻き込んででも標的を殺害するような命令が何度も下されます。

トミーと新米のヴェラとジョンズ中佐はこの任務に明らかな不快感を示しますが、一方で残りの仲間達は素っ気無く卒なく淡々とこの任務をこなしている点が恐ろしいです。

 

CIAからの極秘任務で一般人もろとも爆撃誤爆というには余りにも意図的すぎます)して無関係の人々を殺害する一方、トミー達の監視する地区で女性を暴行した男は「標的じゃないから」無視して放置します。

そんな矛盾した状態に日々晒された結果、トミー達の部隊には人間性が破壊されるか麻痺したか、そのどちらかしか居ない状態になってるように見えました。おかしくならない方がおかしい状況。

 

 

そしてトミーは最後に、女性に暴行を働いていた一般市民を私的に爆撃します。

女性が爆撃に巻き込まれ死亡してしまったのではないかと一瞬ひやっとするトミーですが、その後女性が起き上がり、トミーは胸をなでおろします。

そんなものは正直どうでもよくて、トミーが結局はUAVによる一方的な攻撃という手段で、自分の中の正義を全うしてしまった事が悲しすぎます。

これって「どうせ命令で散々無差別爆撃したしもういいや」的な諦めに繋がってしまっているように僕には見えてしまって、あまりにも虚しい最後だと思うんです。

 

 

 

FPSなどのゲームが大流行した当初、それに対して「人を殺す現実感が麻痺するのではないか、現実の犯罪を増長するのではないか」みたいな事を危惧する意見がたくさん出ていたことがありました(日本では未だに言われてますよね)

ところが現実の世界では、既にゲーム的に実際に人を殺すという戦い方が確立されている事実があります。

その状況下で自分を麻痺させても現実と向き合っても、行きつく先にまともな状況なんて無いんじゃないかっていう、そういう暗い世界の到来を示しているような気もしました。

 

 

 

個人評価:★★★☆☆

 

アメリカのかたる正義と無人機による攻撃という状況が齎す異常性の中で精神を疲弊させてしまった男の姿を描いた映画でした。

ゲームと現実の境目が曖昧になりそうな新兵器とシステムに、全うな倫理観と人間性をもって挑んだ結果、ひとりの男が壊れていくというとても悲しくて虚しい作品ですが、冒頭で示される通り"事実に基づいた"映画である点がなにより恐ろしいと思います。

 

戦争なんだからお互い命を賭けて戦え!とかそういう事ではなく、一方的な殺戮を可能とするシステムがもたらす問題点、UAVによる攻撃という手段とシステムがもたらす問題点を浮き彫りに、かなり明確に描いていたと思います。

突き詰めて言えば、人殺しが正当化される戦争が抱える矛盾そのものを描いた映画と言ってもいいのかも。

 

 

この映画はアマゾンプライムビデオや下記の配信サービスで視聴できます。

 

 

ではまた。

ドローン・オブ・ウォー(字幕版)

ドローン・オブ・ウォー(字幕版)

  • 発売日: 2017/07/21
  • メディア: Prime Video